CASE_002:sio / Shusaku TOBA / Owner, Chef

CASE_002

sio

Shusaku TOBA / Owner, Chef

サッカー選手、小学校教員を経て、32歳で料理の世界に飛び込んだ「sio」のオーナーシェフ・鳥羽周作氏。
「美味しい幸せの民主化」を目指して店舗展開を広げる彼が、
まずは「sio」のおしぼりへの抗菌加工技術として「HUG」を導入してくださいました。
ここでは、彼が目指す「幸せの民主化」と、
その過程でなぜ「HUG」プロジェクトに賛同いただけたのかについて、話を伺いました。

2020.12

スポーツ選手、小学校教員など、さまざまなバックグラウンドを持つ鳥羽さんですが、あらためて料理の世界へ足を踏み入れたきっかけについて教えてください。

もともと学校の先生をしていたんですが、昔から料理とか家具が大好きだったんです。ある時、趣味のために仕事をするのか、やりたい仕事をやるのかを考えて、料理にチャンレジしたいと思いました。ただ、独学でやるのは肩身がせまいなと感じたんです。そこで、まずカフェで働いてみたんですが、料理を知れば知るほど奥が深すぎて。どうせやるなら一流のレストランで働きたいというところから、気がつけばここまで来てしまいました(笑)。

そんな熱意から、働いていたお店を買い取り、「sio」としてご自身のオープンをしました。

一料理人としてミシュランは避けて通れないと思っていたので、そこを目指すお店として「sio」をはじめました。料理人としてのロックな思いですよね。独立してミシュランとって、今までのやつらを見返したい、みたいな。だけど、ミシュランを獲得したところで、誰かと戦うってことが急に虚しくなって。それより、世の中の幸せを増やす方が自分らしいんじゃないかって気付いたんです。戦いって案外すぐに決着がついちゃうから達成感がなくて、終わらない戦いの方が楽しいんだって。

それ以来、世の中の幸せを増やしていこうと。

はい。一番ショックだったのが、子供が通ってた幼稚園の同級生のお母さんから「高いから、なかなかいけない」と言われたこと。一部でいくら評価されようと、来れない人がたくさんいるのって、自分が作る料理の価値がないに等しいんじゃないかって思ったんです。そんな時、「sio」のロゴをデザインしてくだった水野学さんから「POPは尊い」という話を聞いて、ハッとしました。自分はミシュランとって2万円のコース料理を出して満足していていいのかと。だからこそ、「o/sio」みたいな新しい店舗を始めたんです。そうだ、ファミレスをやろうって。

今年は店舗展開に加えて、宅配やレシピの公開など、あらゆる手段を使って「幸せ」を届けてきたように感じます。鳥羽さんが考える「幸せの民主化」に、今の時代背景は影響していますか?

いつの時代も本質は変わらないけど、本質の伝え方は変わっていくはずです。特にレストランはお客さん商売なので、その時代の答えはお客さんしか持っていません。それが全てだと思っていて、テイクアウトがほしいとか、料理をする時間が増えたからレシピが見たいとか、お客さんと直接コミュニケーションをとって、すぐに動いてきただけなんです。

これまで、レストラン業界では「レシピは教えないものだ」というのが一般的だったように感じます。

僕はそこに全然こだわりがなくて。そもそもシェアする精神しかないです。レストランでもレシピ聞かれたら教えますし、再現性が高くて喜ばれることも多くて。たとえば、レシピを公開するにしても、僕は簡単なものしか使わないんです。それは、誰でも作れるほうが良いと思うから。コロナ期間にレシピを公開したことで、「レシピで作ってもこんなに美味いなら、お店はもっと美味いでしょ」っていう形で結果として集客にもつながりましたが、僕らはただお客様を喜ばせたいって思ってるだけ。だから、やれることももっとたくさんあるはずなんです。

どんどん外へと活動を広げている鳥羽さんにとって、そもそもレストランはどんな場所なんでしょうか。

僕たちはある意味でプラットフォームだと思っています。レストランがスーパーショールームとなって、シェフがキュレーターになり、レストランを通じていろんな人を幸せにいろんなものを届ける。そのためには、いろんな人といろんな形で一緒に仕事をしたい。

なるほど。今回「HUG」を導入していただいたこともその一つの形なんだと思うのですが、導入に至ったきっかけを教えていただけますか?

最初は(ALL YOURSの)木村さんが連絡をくれて、フラットに話を聞いたんですけど、まず単純に飲食店として「HUG」を使わない理由がないということ。なんでやったんですかと聞かれたら「必然だから」です。あと、もう一つ、うちがこのサービスを使うことで、その可能性をもっと広げられると思ったから。レストランをプラットフォームにしたいなら、ほんとうに紹介したいものを取り入れないわけがない。

いいと思うものをただ取り入れているだけだと。

そう。ただ、そこには信頼がある。愛がある。単純にいいものじゃなくて、好いてるし、好かれているから、長期的に続く関係になっていける。うちは熱量のあるところとしか仕事をしませんが、愛があるからこそ、おしぼり一つ取っても、こんな加工をしているということをお客さんに伝えたくなる。そこに志がある会社とない会社で、伝え方が全然変わるんですよ。でも、これからは、世の中を幸せにするためにそういう人たちが越境して集まっていく時代だと思っています。それはある意味で今っぽいし、本質的だし、言ってしまえば当たり前のこと。レストランが魚の産地は気にするのに、椅子にはこだわらないの変じゃないですか。パンはこだわるのに、おしぼりにこだわらないのは、僕としてはありえない。

鳥羽さんは「世の中を幸せに」するために、あらゆる人たちと手を組み、より大きな社会課題に向き合っているように思うのですが、今感じている飲食業界の課題って何ですか?

美味しいかどうかって人の好みではあるんですが、いいものがちゃんと広がっていないのはよくない。売れるから美味しいという考えは大事だけど、美味しいから売れるという方のベクトルも大切で。たとえば、サラダの切り方にまで思想のあるレストランが100店舗くらいできたらいいじゃないですか。大前提として、美味しいがあって、どうやって届けるかを考え抜く必要があると思います。

「ファミレス」ってそういう点でも、幸せを民主化できる場所ですよね。

組織として大きくないとできない社会課題もあって、それは面の話だから、規模を拡大していくというのにはチャレンジしたいですよね。ほんとうはお店を増やすの大変だから、自分たちの見える範囲だけ幸せにするなら、一店舗だけやってる方が儲かるんです。でも、僕はがっかりされるような仕事をしたくないし、やりきるためにも「sio」をでかくしたいと思っています。

では、あらためて、最後にこれからの展望について教えてください。

これからは、最高のものを普通にしていく時代です。これは間違いない。そのためには、消費者がいいものに触れることも大事で、いいものに囲まれるのが普通になっていくってのが本当のニューノーマルだと思うんです。だから、お客さんが選べる環境を作ることが大事だと思います。たとえば、おしぼりも嫌な匂いがなくて安心できる状態がスタンダードになれば、そうでないものがなくなっていくわけですよね。そうやって、僕たちはこれからも、お客さんが求める最高のものを提示し続けるだけです。

photo: Masako Nakagawa

鳥羽周作 / sioオーナーシェフ

1978年生まれ、埼玉県出身。Jリーグの練習生を辞め、小学校の教員を経て、32歳で料理人の世界へ入門するという異色の経歴をもつ。神楽坂のDIRITTO、青山のFlorilegeで修業を積み、恵比寿のAria di Tacuboでスーシェフを2年務めた後、2016年3月より代々木上原【Gris】のシェフに就任する。その後、同店のオーナーシェフとなり、2018年7月より、sioをリニューアルオープン。ミシュランガイド東京2020から2年連続一つ星を獲得。現在では、丸の内にo/sio、渋谷にパーラー大箸を展開。